大口を開いた支倉は忽ち足を飛ばして寝ている子供を蹴飛ばそうとした。静子は驚いてその足に縋りついて、大声に叫んだ。
「あれ! 誰か来て下さいっ!」
然しどうしたのか声が思うように出なかった。一生懸命に夫を押えている手も女の悲しさ、次第に力が弱って、今にも子供諸共踏み躙《にじ》られそうになった。彼女は身を悶えながら只微に、
「あれ――」
と呻くばかりだった。
「もし/\、奥さん。どうしたんです」
耳許に聞き覚えのある太い声が聞えたので、ハッと眼を開くと、のっそり浅田が立っていた。静子は今まで転《うた》た寝の夢を見ていたのだった。
吃驚した彼女は飛起きると、浅間しい寝乱れ姿を繕《つくろ》った。
「どうなすったんです。大そううなされていましたぜ。玄関で大分呼んだのですけれども、返事がないので上って来たのですが」
浅田はニヤ/\しながら云った。
「いろ/\思い案じているうちに昼間の疲れでつい転た寝をしたと見えます。そして恐ろしい夢を見たものですから」
居ずまいを直した静子は襟元にゾク/\と寒気を催しながら答えた。この程から一方ならぬ世話になっている浅田に対しては、断りなく居間まで這
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