。私を助けてくれ、殺したと云うて背負って行って呉れと幾度となくたのまれたのであります」
[#ここで字下げ終わり]
 以上は上願書中にある一断片だが、根岸、石子両刑事の方を質してみなくては分らぬ事だが、支倉の云う所は或る程度まで事実に違いない。両刑事は彼をどうかして自白させようと、或いは脅し、或いは誑《だま》し賺《す》かして妻子を枷《かせ》に彼を釣ったかも知れない。尤も之は聞く方のトリックで、場合によっては随分好くない事もあろうが、こんなトリックに乗ってうかと白状する方も、実は身に覚えがあって、どうかしてそれから逃れようと思っていればこそで、向うが隠すのだからトリックを弄するのも止むを得まい。合監に諜者を忍び込まして味方らしく持ち込んで、向うの信頼に乗じて秘密を喋らしたりするのよりは、面と向っているだけ罪が軽いと云える。
 所で、支倉が云うように両刑事がペコ/\頭を下げて、どうか自分達を助けると思って罪を背負って呉れと繰返し頼んだかどうか疑問だが、どうもこの様子では両刑事が、お前は男だろうとか宗教家だろうとか煽《おだ》て上げ、自分達を助けると思って白状して呉れと哀れみを乞うように云ったか
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