なる死体骸骨はまさしく小林貞に相違ありませんでしょうか、小林さだ子としたなら他殺でしょうか自殺でしょうか。それとも何時どうして死に至りしものなのか。私は小林さだ子とは思われんのです。小林さだ子としたならば最少《もすこ》し小さくなければならんのです。神楽坂署にてあれなる死体につき色々に説明を聞きましたなれど、未だ今尚私は疑惑の波に漂うて居るのであります。
神楽坂署石子刑事の云分。
お前は小林さだ子を殺害して居るではないか。知りません、殺害して居りません。うそつけ、之れなる骸骨は小林さだ子だよ、お前の妻は立証しているのだ。あの時の下駄を見たろう。見ました、なれども誰れのかわかりません。わからんことはない、小林さだ子の下駄だとお前の妻は云うているのだ。
そしてお前が殺害したものであると云う事までも云うて居るのだ。白状しろ。どう妻が云うて居りましても私は一向存じません。存ぜん事はない、分らんでは通らん、通させぬのである。この野郎並大抵では中々容易に白状せん、拷問に懸けてやれ」
[#ここで字下げ終わり]
支倉の上願書は縷々として続くのである。
「それからと云うものは毎日々々刑事室に引出
前へ
次へ
全430ページ中308ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング