分から、必死の力を絞り出し、苦痛は呪いを生み、呪いは悪を生み、悪は更に悪を呼んで、生きながら悪の権化と化し、世を呪い人を罵り蒼白な顔に爛々たる眼を輝かし、大声疾呼して見る人をして慄然たらしめたと云う、世にも稀な世にも恐ろしい彼の半生の出発点ともなったものであるから、こゝにその概略を掲出して、断罪の項を終ろうと思う。
 この上願書は半紙に凡そ二十二枚、いと細々《こま/″\》と認めたもので、彼の精力と記憶力の旺盛な事と、底の知れない執拗さとを歴然として示している。
 表紙に一枚別の半紙がついていて、それには筆太に、「上願書」と書し、その傍に稍細い字で「一名殺人犯としてその名目に座する弁明書」と書き、最後に「被告人支倉喜平」と書かれている。
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「判官閣下
聖代仁慈の大正の今日警察内に拷問なきものと思い居りしに、そうではない、今尚神楽坂警察署内に旧幕時代の面影を存しているのであります。実になげかわしき至りであります。
 被告喜平はその拷問に遇い虚偽の申立てなし殺さぬ者を殺したとして今裁判所に移されている者であります。
 今を過ぎぬる四年前小生家宅近在の井中より浮上りしあれ
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