てた件は第一の聴取書をのぞく外満足なのは少しもありません。同日は明治学院より三一神学校を経浅草へ行き花屋敷に入り、米久《よねきゅう》牛肉店にて夕飯を食し、帰宅したのであります。
神戸牧師仲介の下に事済みとなりしものを、自分にして病院へ伴れ行くいわれありません。仲介者が俗に云うゴロツキならいざ知らず、立派な牧師が立会い事済みとなりしものを、誰が考えましても後から又金をゆすられる心配ありましょうか、ありません、荊妻もその一切を承知して居るものに自分は荊妻に申訳ないからとて同人を殺す、そのような事を気狂いならいざ知らず、自分はいたしません、自分には出来ないのであります。
人生無常年齢十代で死す者もありますれば、二十代で逝く者もあります。自分は五十を余すこと六ツ、命を惜しみはいたしません、然し冤罪の下に悪名を帯び斃れる事を嘆くものであります。神楽坂署で申立ての土方を頼み放火させた覚えありません。自分も又放火した覚えもありません。
英邁賢明なる判官閣下、事件の前後に付き御判断なし下され自分の犯してあらざる事、御証明いただき度し」
[#ここで字下げ終わり]
以上が上願書の論文である。
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