り直さねばならぬ事になるかも知れぬ、至急に事実を確かめなければならぬと思ったからである。
古我氏は直に市電気局に当時既に電車が開通していたか否かの問合状を発するよう書記に命じた。
所が流石に支倉はさる者だ。彼は早くも古我判事の狼狽の色を見て取ったと見えて、機乗ずべしとなし、獄中より上願書と題して半紙二枚に細々《こま/″\》と認めたものを差出して古我判事を動かそうとした。
当時支倉は神楽坂署で自白をしたと云う事を深く後悔していた。彼は周囲の事情が刻々に自分に不利に展開し、剰《あまつさ》え立派な自白と云うものがあるので、最早云い逃れられぬ羽目に陥っていた。彼はこの儘では絞首台上の露と消える外はないと自覚したので、どうかして一方に血路を開いて、この不利な形勢から逃れようと急《あせ》っていた所へ、今日ふと投げて見た一石が案外、波紋を描きそうになったので、隙かさず哀訴を試みたのである。
彼の上願書と云うのはざっと次のようなものである。
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判官閣下
被告は只今聞くだに恐ろしき罪名の下に拘禁されて居りますものゝ、神楽坂署にて申立ての事柄は事実無根にて、被告の犯し居ります
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