一日を置いて四月二日には疾風迅雷的に古井戸を浚渫《しゅんせつ》した人夫、請負った親方、検視をした医師、静子の母親の四人を喚問して調べ、同日被告支倉の第二回訊問を行っている。
証人調には読者諸君も倦きられたであろうが、今暫く辛抱して裁判所の綿密なる調査に敬意を表し、支倉の奇々怪々な返答振りを待って貰いたい。

 井戸掘人夫島田某は死体発見当時の有様を古我判事にこう答えた。
「上大崎所在の古井戸は山谷親方から頼まれまして六人で浚いましたが中へ這入ったのは私一人でした。井戸の大きさは直径三尺五、六寸で水面までは三丈位で、中へ行く程広くなり底の所は直径二、三間ありました。水の深さは七尺位だったでしょうか。井戸の囲《まわ》りには樹が四、五本ありまして、井戸の所は草が茫々と生えていました。
 私は中へ這入りまして水を汲み上げるのに邪魔な樹の切れ端などを取除き、玄蕃桶で水を汲み初めますと、暫くして桶に当るものがあります。見ると大きた切株ですから引上げようとしますと菰が手に触りました。で、その菰を取除こうとしますとニュッと人間の足が出たのです。私は吃驚しましたが、気を落着けてよく見ますと、紛う方なき死
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