落として殺したのであります」
小塚検事は静かに支倉を観察した。そうして傍にあった神楽坂署から被告人と共に送って来た戸籍調書と前科調書とに眼を落とした。直ぐその傍には証拠物件が堆高く重ねてあった。小塚氏はじっと考えを凝した。
窓外《そと》では恰度この時春光を浴びながら、透き通るようなうすものゝショールを長々と飜えして、令嬢風の女連が、厳めしい煉瓦造りの建物を黙殺し乍ら歩いていた。
やがて小塚検事は筆を取って予審請求書に署名をした。そうして、
「司法警察官意見書記載の犯罪事実全部を起訴す」
と書き加えた。
支倉喜平《はせくらきへい》は小塚検事に依って起訴されると、即日予審判事|古我清《こがきよし》氏によって第一回の訊問を受けた。
型の如く住所氏名職業等を問質した後、判事は厳然として前科を述べよと云った。
支倉の前科については正しい調書があるからこゝで鳥渡述べて置こう。
彼はすべてゞ前科四犯を重ねているのだった。
初犯は明治三十六年で、山形地方裁判所鶴岡支部で窃盗罪により重禁錮三ヵ月に処せられている。当時彼は二十二歳である。二犯は翌三十七年で、同じく窃盗で山形地方裁判所に
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