、偽りも申した事はありますが、その当時は自分の犯罪を自白せずに自殺しようと思い、石を呑んだり硝子を呑んだり、銅貨を呑んだり、又は古釘で頭蓋を突き破って死のうとしたり試みましたが、自殺の目的を達する事を得ず、煩悶している間に今日の場合は寧ろ潔く事実を陳《の》べ、妻子が無関係であるのに再三再四裁判所へ呼出されて迷惑する事のないようにした方が宜しいと決心がつきましたから、昨十九日署長にも願って妻子の事に就いて後事を託したいと存じ、中野の宣教師ウイリヤムソンを呼んで頂き面会して後事を託し、尚神戸牧師及妻にも面会を許して頂き、心の残りのないようにして此処へ参りましたのですから、決してもう偽りは申しませぬ」
 彼はそう前提して、聖書の窃盗は元より前後三回の放火についても詳細自白し、尚貞を殺した事についても次の如く陳述した。
「――時刻は夕方であったかと思いますが、夫れが大正二年九月二十六日の事であったかどうか記憶がありませぬ。貞がいなくなったのが同日であったとすれば其の日であったか、何時だったかも思い出せませぬ。然し私は貞の居なくたったと云う日の午後九時頃、実は上大崎所在の空地内なる古井戸へ貞を突
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