し、こんな問題で署長を責めるのは少し酷であろう。社会の安寧秩序を保つ上に於て、犯罪人を検挙して告発する職務にある以上、頑強な犯人や、反社会思想の顕著な者に対し、温情を以て諄々として説く事は必要であろうし、時にその途なしと考えながらも自白すれば重かるべき罪も軽くなるように説くのも蓋し止むを得ないであろう。但し、支倉を告発するに際して、洗いざらいにすべての罪を挙げて、八つまで罪名を附したのは稍遺憾の点がある。之は一つには支倉が極悪人であると云う心証を与える為でもあり、一つには警察署の方で不問に附しても、検事局或いは予審廷で犯罪事実が現われては何にもならぬのみならず、反って警察側の失策になる事を恐れたのであろうが、いずれにしても警察当局者が功名に逸《はや》ったと云う非難は或程度まで受けねばなるまい。
支倉を検挙して恐るべき犯罪事実を自白せしめたのは、何と云っても警察当局者の一大成功である。而もそれは当時の署長が庄司利喜太郎氏であったればこそ始めて出来たのであると云っても過言ではあるまい。頑健なる巨躯、鉄の如き神経、不屈|不撓《ふとう》の意志、それらのものが完全に兇悪なる支倉を屈服せしめたの
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