がて又そわ/\と這入って来て、中の有様を見渡すと又出て行ったりした。そんな事が何となく物々しく感ぜられて、やがて起ろうとする事件を暗示して、異様な静けさが一座の人々に息苦しい緊張を与えるのだった。
 物狂わしい沈黙が数分間続いた。
 コツ/\と云う忍びやかな足音が聞えて来た。
 やがて扉がスーッと開いて、腰縄を打たれた支倉が悄然と這入って来た。石子と渡辺の二刑事が彼の背後に従っていた。
 彼は命ぜられるまゝに署長と神戸牧師の前にあった椅子に腰を下して、じっと頭を下げていた。
「支倉」
 署長は優しく呼びかけた。
「お前は日頃尊敬している神戸牧師に面会する事が出来て嬉しいであろう。何なりとも心置きなく話すが好い」
 署長の言葉と共に、神戸牧師は少し椅子を乗り出して、きっと支倉を見やった。
 この時の事を神戸牧師は回想してこう書いている。
[#ここから2字下げ]
「小さい署長の部屋の中央に二脚の安楽椅子があった。庄司氏は其一つを、予は他の一つを占領していた。予の隣座に偶※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》証人として来ていたウイリヤムソンと云う宣教師が坐っていた。机を隔てゝ支倉の細君静
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