に遭わなければならなかったのである。支倉に会う事の気が進まなかったのは、蓋し虫が知らしたのであろうか。
机を前にして署長は悠然と肘付椅子に腰を掛けていた。それと並んだも一つの肘付椅子に神戸牧師が席を占めていた。傍には証人として喚ばれていたウイリヤムソンと云う外国宣教師が、当惑そうに眉をひそめながら普通の椅子に腰をかけていた。それだけでこの狭い署長室はいくらも余地がなかった。
めっきり春めいて来た午後の陽はポカ/\と窓に当っていた。窓の外には僅かばかりの庭があって、ヒョロ/\と数本の庭木が立っていたが、枝から枝へとガサゴソと小鳥が飛んでいた。時折チヨ/\と鳴く声が室内へ洩れ聞えて来た。
三人は無言のまゝじっと控えていた。
やがて扉が開いて、面|窶《やつ》れのした支倉の妻の静子が刑事に附添われながら、蒼白い顔をうな垂れて這入って来た。彼女は室内に這入ると、そのまゝベタンと板の間の上へ坐って頭も得上《えあ》げず、作りつけた人形のようにじっとしていた。後れ毛が白い頸の上で微に戦《おのゝ》いていた。神戸牧師は意味もなくそんなものを見つめていた。
附添って来た刑事は直ぐ出て行ったが、や
前へ
次へ
全430ページ中248ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング