から来たもので、巻紙に肉太の達筆で長々と認《したゝ》めてあった。何となく圧迫されるような気持で封を切った石子刑事は、忽ち両手をブル/\顫《ふる》わせて、血の気を失った唇をきっと噛みしめた。
石子刑事に宛てた支倉の手紙には次のような事が書かれていた。
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拝啓
過日|態※[#二の字点、1−2−22]《わざ/\》御来訪下され候節は失礼仕候。一旦御同行申すべきよう申し候え共、つら/\考うるに警察署の取調べと申すものは意外に長引くものにて、小生目下|鳥渡《ちょっと》手放し難き用件を控えおり、長く署内に留め置かれ候ようにては迷惑此上なし。依って右用件済み次第当方より出頭仕るべく候間左様御承知下され度候。尚一筆書き加え候が、多分は聖書の件と存じ候が、あれは尾島書記より貰い受けしものにして、決して盗み出せしものに非ず、右御誤解なきよう願上候。呉々も小生居所についての御詮議は御無用に願度、卿等の如き弱輩の徒には到底尋ね出ださる余に非ず、必ず当方より名乗って出《い》ずべきにより、無用の骨折はお止めあるよう忠告仕候。
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石子刑事は歯噛みをして口惜しが
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