らカラリと晴れ上って、朝はシトヾに濡れた路に所々に水溜があったり、大きく轍《わだち》の跡がついているのを名残として、美しい朝日がキラ/\と輝いて、屋根からも路の上からも橋の上からも、悠々と陽炎《かげろう》を立たせていた。
 由緒のある深川八幡宮の広々とした境内は濡そぼった土の香しめやかに、殊更に掃清めでもしたように、敷つめた砂の色が鮮かに浮び出ていた。雨に打たれて半《なかば》砂の中に潜り込んだ、紙片が所々に見えて、反て風情を添えていた。
 未だ昼には間のある事とて、露店商人も数える程しかなく、ホンの子供対手の駄菓子店や安い玩具を売る店などが、老婆や中年のおかみさんによって、ションボリと番をせられているだけで、怪しげな薬を売ったり、秘術めいた薄ぺらな本などを売りつける香具師《やし》達の姿は一つも見当らなかった。
 社頭は静寂としていた。
 拝殿の前の敷石には女鳩男鳩が入乱れて、春光を浴びながら嬉々として何かを漁っていた。小意気な姐さんが袋物の店を張る手を休めて、毎日眺めている可愛い小鳥達を、今日始めて見るように見惚れていた。参詣人はチラホラその前を通り過ぎた。
 すべてが長閑《のどか》だ
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