坐っても立ってもいられないので、恥も外聞も忘れて貰い下げに行こうと思っていたのだった。そこへ、ひょっくり夫が無事に帰って来たので、お篠は飛び立つ思いで夫を迎えた。
「まあ、よく帰って来られたわねえ」
「――――」
 浅田は黙って不機嫌らしく彼女を睨んだ。
「怒っているの」
 お篠は不安そうに、
「堪忍して頂戴、みんな私が悪いのだから。腹立まぎれに詰らない事を云っていけなかったわね」
 縋《すが》りつかん許りにして訴える自分の言葉に一言も報いようとしない夫を恨めしげに見上げたお篠は、ふと初めて夫の後ろに見馴れない男がいたのを見つけた。
「まあ、誰かいるのねえ。人の悪いったらありゃしない」
 お篠は腹立たしそうに、
「一体誰なの、お前さんは。又刑事なんだろう」
「そうですよ。おかみさん」
 渡辺はニヤ/\と笑った。
「随分しつこいのね、警察と云う所は」
 お篠はそろ/\声を上げ出した。
「又、支倉さんから来た手紙を探しに来たのかい。一日のうちに二度も来るのね」
「おい、静かにしろ」
 浅田は低い声で叱るように云って、刑事の方を向いた。
「旦那どうぞお気にされないように願います。いつでもこう
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