「何分三年も前の事で、その後井戸は埋めて終いましたし、どうもよく分らないのです。然し調べた所に依りますと、確に井戸側はあったようで、過失で陥込むような事はなかろうと思われます」
「ふん」
署長は忙《せわ》しく瞬きながら、
「それで何だろう、その娘が覚悟の自殺をしたかも知れんと云う事実はないのだろう。遺書なんか少しもなかったと云うじゃないか」
「遣書なんか一通もないのです。それに年が僅に十五か十六ですから、聞けば少しぼんやりした方で、クヨ/\物を考える質《たち》ではなかったそうですから、自殺と云う事は信ぜられませんね」
「じゃ、君、過失でもなし、自殺でもないとすると、他殺に極っとるじゃないか」
「えゝ、その屍体が貞と云う娘に違いないとしてゞですね」
「年齢の差などは当にならんさ」
署長は押えつけるように云った。
「僕の考えでは一度その屍体を調べて見る必要があるね」
「然し、署長殿」
司法主任は呼びかけた。
「その屍体は自殺と云う事になっているのですが」
「そいつも確定的のものでありませんね」
根岸が口を出した。
「死後六ヵ月の溺死体とすると容易に自殺他殺の区別を断言する事は出来
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