悪鬼のように吊上がった。
「愚図々々|吐《ぬ》かすと、只じゃ置かないぞ」
「なんだって、只は置かないって面白い、手前が恥しい真似をしやがって、あたしをどうしようていんだ。殺すなら、さあ殺せ」
「うるさいっ」
浅田は呶鳴った。
「貴様みたいな奴を誰が殺すもんか。こゝでは話が出来ない、家へ帰れ」
「誰がこのまゝ家へ帰るもんか。あたしゃこの場で何とか極りをつけて貰うまで一寸だって動きゃしない」
「帰れったら帰らないか」
「いやだよう、支倉の奥さん、何とか鳧《けり》をつけとくれ」
静子は蒼白い顔をして、大きく肩で息をしながら、浅間しい夫婦の乱闘を眺めてはら/\していたが、どうする事も出来なかった。
浅田はとう/\お篠の腕を捻上げて、グン/\引立てた。
「奥さん」
部屋を出る時に浅田はグッと静子を睨みつけながら云った。
「どうも失礼いたしました。このお礼はきっとしますぞ」
静子はブル/\顫えて顔を伏せた。
泣き喚くお篠をしっかり小脇に抱えて、玄関に出ると浅田はハッと立竦んだ。
そこには根岸刑事が冷やかな笑を浮べながら、突立っていた。
日外《いつぞや》一度取調べられてから、どことな
前へ
次へ
全430ページ中125ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング