く熱して来た。

「然し」
 木藤大尉も屈しなかった。
「法律上の罪人でも救う道はあると思います。例えばユーゴーの小説レ・ミゼラブル中のミリエル僧正がジャン・バル・ジャンを救ったようにですね」
「あなたは何か誤解をして居られませんか」
 神戸牧師は大尉の顔を見ながら云った。
「支倉は獄中から度々私に手紙を寄越して、『神戸さん、あなたは牧師だったら、ホントの事を云って下さい』とか、『私はあなたからホントの事を云って貰って、あなたに救われたなら、あなたの為に出てからどのような事でもする』とか云って居りましたが、多分あなたにもその通り申上げたでしょう。その為にあなたは私が何か嘘でも云っているようにお取りではありませんか。あなたは最近に不意に支倉に会われて、彼の口から冤罪を訴えられたので、すっかり信じてお終いになったかも知れません。私は久しい以前から彼を知っています。現に彼の自白の場面にも立会ました。で、私はあなたが今彼の訴える事を信じられる通り、彼の自白を信じざるを得ません。あなたも今の彼の云う事を信じて、以前に彼の云った事を信じないと云う事は出来ないでしょう」
「ご尤もです。一言ありません」
 木藤はうなずいた。
「私だって彼の冤罪を全然信じている者ではありません。ですから、こゝでは彼の云う事が正しいか正しくないとか云う問題でなく、彼も今となっては悔悟の涙に暮れているのですから、どうでしょう、義侠的に彼を救ってやって下さいませんか」
「成程、あなたのお考えはよく分りました。憐れな囚人や、醜業婦や、貧民窟の貧乏人を救ける位の義侠は宗教家としては持合せていなければならぬ筈です。然しそれも事柄によります。現在のように法律問題となって、法廷の曲直を争っている彼に対して、私が義侠的に救けると云う途はないと思います。法廷に立って私は、権力を以て強られるまゝに、真実私の感じた事を述べるより外はありません」
「先生の御意見はよく分りました。では私として、法廷の証言以外に彼に対して、どうか好意を持ってやって頂きたいとお願いするより致方ありません」
「私は前申上げた通り、彼に対して悪意を持った事はありません。仰せの如く今後出来るだけ好意を持ち続ける事にいたしましょう」
「どうも恐れ入ります。そう願えれば之に越した喜びはありません。それから」
 木藤は鳥渡言葉を改めて、
「お言葉に甘えてお願
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