も揃って、正を踏んで恐れざる斯界勇猛の士に当ったのは、支倉の運の尽きる所だった。
 宮木判事は如何に本件を解決すべきか、日夜沈思した。支倉の罪悪中最も重いのは殺人であるが、之を確認するには先ず被害死体が果して小林貞であるか否かを定めなければならない。被害死体が貞でないとすれば問題は根本から覆《くつがえ》って終う。死体が貞であると決定しても尚自殺か他殺か過失死かいろ/\問題が残るけれども、要するに死体の確認が第一である。予審調書に現われた所では未だ確実と云い難い。こう宮木裁判長は考えた。恰もよし、同じ思いの能勢弁護人より鑑定の申請があったので、忽ち之を許可すると共に、頭蓋骨については一名、着衣の一部である布地については二名の鑑定人を附する事にした。
 十月二十五日続行裁判の劈頭に於て右の鑑定人が呼び出された。
 一人は頭蓋骨の鑑定を命ぜられた斯学に学殖経験深き帝大医科の助手友長医学士で、一人は布地の鑑定を命ぜられた本郷の裁縫女学校長として令名高き田辺氏だった。
 頭蓋骨の鑑定事項は次の如くである。
     鑑定事項
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一、大正六年押第二八八号二十八の頭蓋骨につき其者の性、年齢、顔貌の特徴、栄養の程度及び能うべくば死因の鑑定をする事。
特に上顎門上歯が幾分前に出て居りしや否や、下顎犬歯は普通人に比して長きや否や、犬歯の俗称鬼歯と称するものなりや否や。
下顎、犬歯は噛合するとき上顎歯列の前に出ずるや、及び智歯の存否。
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 裁縫女学校長田辺氏に命ぜられた鑑定事項は次のようだった。
     鑑定事項
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一、大正六年押第二八八号十五の布地の地質並に地色。
帯に用いられたる布片ありや否や。
帯とせば該布片により見たる帯としての幅如何。
帯とせば腹合帯一片なりや否や。
然りとせば其想像したる原形如何。
毛繻子に折返し其上に片側メリンスを縫付けある(片側全部なりや否やは不明)帯の残片に該当せざるや。
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[#地から2字上げ]以上
 鑑定人はいずれも承諾した旨返答をして退廷した。
 尚も一人の鑑定人は高工教授の佐藤氏で、之は四、五日遅れて十月二十九日の公判廷へ呼び出されているのだが、便宜上ここへ併記して置こう。
 この鑑定事項は簡単で
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一、大
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