ている家庭用炭酸水製造器に、拇指よりも小さいボンベに液状となって使用されている。けれども一酸化炭素も液化出来ない事はない。空気中一%を含んでも二分間で死ぬというのだから、純粋なものだったら、殆ど即座に死ぬだろう。
 所で私が液化一酸化炭素に着眼したのは何故かというのに、事件の起った時に、警察署長と現場へ行ったが、そこで、署長とそれから私も、現場の寝台附近にあった絨氈《じゅうたん》が、直径一寸ばかりボロボロになった穴が開いていたのを認めた。それは一見焼け焦げのようで、それとは違っていた。液体空気の実験を見た者は誰でも知っている通り、液体空気の甚しい低温はそれに触れたものから急速に熱を奪い去るから、皮膚に触れれば火傷《やけど》のような現象を起し、ゴム毬《まり》などは陶器のように堅くなって、叩きつけるとコナゴナになって終う。
 液化一酸化炭素はその低温の度は液体空気と大差ないから、仮りに絨氈の上に溢れたら、そこは必ずボロボロになるに違いない。当時はちっとも気がつかなかったが、ボロボロになった箇所は寝台の頭部に近く、天井の隅の通風孔の真下ではないが、極く近い下にあった。
 それからもう一つ、当
前へ 次へ
全75ページ中62ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング