酸化炭素の中毒で死んでいたものなら、ガス中毒と見るより以外にないのだ。
私の頭は又割れるように痛くなって来た。私は鉛筆と紙を抛《ほう》り出して、畳の上にゴロリと横になった。
ちぎった写真版
翌日学校へ出るのが、何となく後めたいような気持だった。むろん、何にも疾《やま》しい事はないのだが、顔を見られるのが不愉快なような気がした。みんなは毛沼博士の死のことを盛に噂し合った。新聞記者ほどではないが、私に無遠慮な質問をするものが少くなかった。この日、笠神博士の講義があったが、先生は最初に毛沼博士の不慮の死を哀悼するといって、すぐいつもの通り講義を始めようとされた。すると、級の一人が、
「先生、毛沼先生の死因はガス中毒ですか」
と訊いた。
笠神博士はジロリとその学生を眺めて、
「多分そうだと思います。実は死因を確める為に、私が解剖を命ぜられたのですけれども、思う所があって辞退して、宮内君にやって貰う事にしました。先刻|鳥渡《ちょっと》訊きましたら、やはり一酸化炭素の中毒に相違ないということでした」
いつの場合でもそうだが、今日の先生はいつもより一層謹厳な態度だったので、弥
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