りないものの測定は危険性があるという事を、強調しておられたのだった。
「大丈夫だと思うのですけれども」
と答えると、先生は暫く考えて、
「もう一度やってごらんなさい」
といわれた。
それで、もう一回やって見たのだが、結果はやはり同様だった。
先生は、
「君の手腕を疑う理由《わけ》ではないんですが、一度採血して持って来ませんか」
そこで私は又かと嫌がる両親弟妹から、それぞれ少量の血を採って、先生の所へ持って行った。
それから二三日して、先生は結果については少しも触れないで、
「君は今の家で生れたんですか」
と訊《き》かれた。
「いいえ、今の家は移《こ》してから、未だ五六年にしかなりません。僕は病院で生れたのだそうですよ」
「病院で」
「ええ、初産ですし、大事をとって、四谷のK病院でお産をしたんだそうです」
「病院で」
先生は吃驚《びっくり》したようにいわれたが、直ぐにいつもの冷静な調子で、
「ああ、そうですか」
といって、それっきり何事もいわれなかった。
それから一週間ほど経つと、先生が不意に、
「君、自宅へ遊びに来ませんか」
といわれたのだった。
私は無論喜んで
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