約束したちゅう話を聞きました。
それから私は北の新地へ行きましたな。何しろ、費用はなんぼでも出るし、こんな機会に遊んどかんと、又とでけ[#「でけ」に傍点]るこっちゃおまへんからな。所が、和武が北の新地で遊んだちゅうのは、四五年ももっと以前の話で、若い妓は一向知りまへなんだが、年増芸者は直ぐにうなずいて、「花江はんが可哀そうやわ」ちゅうほど、当時はこの世界で有名な事やったらしいのです。
その花江ちゅう妓は、一旦引いて、二度の勤めで、照奴《てるやっこ》いうてました。もう二十四五で、年増盛りという所、早速呼びましたが、この妓の綺麗なンには驚きました。全く絵に書いた美人そっくりですな。面長で色が白うて、木目が細こうて、何ともいえん品があって、どこに一つの非のうち所がおまへん、之なら華族さんの奥さんいうても、誰でも承知するやろと思われるような女子《おなご》だした。
この女子が又、顔で分るように芸者に似合ぬ人格者だしてな、中々昔の話をしまへん。けンど私も根気ようかゝりましてな、傍《はた》から聞いたり、本人の口からボツ/\探り出したりして、和武との関係を大体の所察することがでけ[#「でけ」に傍
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