キビキビした青年紳士
甲賀三郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)風《ふう》
−−
帝大土木科出身の少壮技術者の創設にかかるものでN・K・倶楽部というのがある。この倶楽部に多分大正十年頃だったと思うが、科学技術者が大挙して入会することとなり、私は準備委員といったわけで、丸の内の同倶楽部へ時々顔を出したことがある。その時分に倶楽部の仕事も段々多くなるし、会員の大部分は昼間他の職業に従事していて、充分に会務を見ることが出来ないから、専任の人を迎えることになった、もっとも庶務担当者として有給の書記が一人二人いたのであるが、今度迎えるのはそれらの上に立つ人で何でも書記長と呼んでいたかと思う。
新たに書記長に迎えられた人は最近まで大阪で新聞の経済記者を勤めていた人で、中々の手腕家であるということを推薦者から聞いていた。私は恰度彼の就任挨拶のときに居合わしたが、いかにも新聞記者らしいキビキビした青年紳士でアクセントのハッキリした歯切れの好い調子で別にそうやっているのではないが、ちょっと肩を聳やかしてものをいうという風《ふう》で中々頼もしげに見えた。
その後も無
次へ
全4ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
甲賀 三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング