生と歌
中原中也
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)技《わざ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号数)
(例)※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)バラ/\
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古へにあつて、人が先づ最初に表現したかつたものは自分自身の叫びであつたに相違ない。その叫びの動機が野山から来ようと隣人から来ようと、其の他意識されないものから来ようと、一たびそれが自分自身の中で起つた時に、切実であつたに違ひない。蓋し、その時に人は、「あゝ!」と呼ぶにとゞまつたことであらう。
然るに、「あゝ!」と表現するかはりに「あゝ!」と呼ばしめた当の対象を記録しようとしたと想はれる。恐らく、これが叙事芸術の抒情芸術に先立つて発達した所以である。仮りに抒情芸術が先だつたといふ歴史上の論証があがつたとしても、近代に至るまで、抒情芸術と称ばれてゐるものゝすべては叙事による抒情、つまり抒情慾が比較的叙事慾よりも強かつたといふに過ぎない。
然
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