目をジッとみるのよ、
怒つてるやうなのよ、まあ……あたし怖かつたわ。
死ぬまへつてへんなものねえ……
修羅街輓歌
関口隆克に
序 歌
忌《いま》はしい憶《おも》ひ出よ、
去れ! そしてむかしの
憐みの感情と
ゆたかな心よ、
返つて来い!
今日は日曜日
縁側には陽が当る。
――もういつぺん母親に連れられて
祭の日には風船玉が買つてもらひたい、
空は青く、すべてのものはまぶしくかゞやかしかつた……
忌はしい憶ひ出よ、
去れ!
去れ去れ!
II 酔 生
私の青春も過ぎた、
――この寒い明け方の鶏鳴よ!
私の青春も過ぎた。
ほんに前後もみないで生きて来た……
私はあむまり陽気にすぎた?
――無邪気な戦士、私の心よ!
それにしても私は憎む、
対外意識にだけ生きる人々を。
――パラドクサルな人生よ。
いま茲《ここ》に傷つきはてて、
――この寒い明け方の鶏鳴よ!
おゝ、霜にしみらの鶏鳴よ……
III 独 語
器の中の水が揺れないやうに、
器を持ち運ぶことは大切なのだ。
さうでさへあるならば
モーションは大きい程い
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