きなら、十五年間の詩生活である。
 長いといへば長い、短いといへば短いその年月の間に、私の感じたこと考へたことは尠《すくな》くない。今その概略を述べてみようかと、一寸思つてみるだけでもゾッとする程だ。私は何にも、だから語らうとは思はない。たゞ私は、私の個性が詩に最も適することを、確実に確かめた日から詩を本職としたのであつたことだけを、ともかくも云つておきたい。
 私は今、此の詩集の原稿を纏め、友人小林秀雄に托し、東京十三年間の生活に別れて、郷里に引籠るのである。別に新しい計画があるのでもないが、いよいよ詩生活に沈潜しようと思つてゐる。
 扨《さて》、此の後どうなることか……それを思へば茫洋とする。
 さらば東京! おゝわが青春!
                           〔一九三七・九・二三〕



底本:「中原中也詩集」岩波文庫、岩波書店
   1981(昭和56)年6月16日第1刷発行
   1997(平成9)年12月5日第37刷発行
底本の親本:「中原中也全集第六巻」角川書店
入力:浜野安紀子
校正:浜野 智
1999年2月17日公開
2001年12月31日修正
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