tの滝の方サ、

死んぢまつた小娘みてエに、
   息切らしてヨウ
おめへは云ふだろ、抱いて行つてと
   眼《め》エ細くして。

抱いてゆくともどきどきしてゐるおめへを抱いたら
   小径の中へヨ、
小鳥の奴めアゆつくり構へて、啼きくさるだろヨ
   榛《(はしばみ)》ン中で。

口※[#小書き片仮名ン、176−13]中へヨ俺ァ話を、注ぎ込んでやら、
   おめへのからだを
締めてやらアな子供を寝かせる時みてエにヨウ、
   おめへの血は酔ひ

肌の下をヨ、青ウく流れる
   桃色調でヨ
そこでおめへに俺は云はアな、
   ――おい! とね、――おめへにヤ分らア

森は樹液の匂ひでいつぱい、
   おてんと様ア
金糸でもつてヨ暗《くれ》エ血色の、森の夢なざ
   ぐツと飲まアナ。

日暮になつたら?……俺等《おいら》ア帰《けへ》らア、
   ずうツとつゞいた白い路をヨ、
ブラリブラリと道中《みちみち》草食ふ
   羊みてエに。

青草|生《へ》エてる果物畑は、
   しちくね曲つた林檎の樹が、
遠方《ゑんぱう》からでも匂ふがやうに、
   強エ匂ひをしてらアな!

やんがて俺等は村に
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