Jリピイジュ
薔薇の吹雪にまよひつゝ
足の下《もと》なる花々や、女達をば摘むでせう!
※[#「IIII」、158−1]
おゝ偉大なるアリアドネ、おまへはおまへの悲しみを
海に投げ棄てたのだつた、テエゼの船が
陽に燦いて、去つてゆくのを眺めつつ、
おゝ貞順なおまへであつた、闇が傷めたおまへであつた、
黒い葡萄で縁取つた、金の車でリジアスが、
驃※[#「馬+干」、158−7]《(へうかん)》な虎や褐色の豹に牽かせてフリジアの
野をあちこちとさまよつて、青い流に沿ひながら
進んでゆけば仄暗い波も恥ぢ入るけはひです。
牡牛ゼウスはイウロペの裸かの身をば頸にのせ、
軽々とこそ揺すぶれば、波の中にて寒気《さむけ》する
ゼウスの丈夫なその頸《くび》に、白い腕《かひな》をイウロペは掛け、
ゼウスは彼女に送ります、悠然として秋波《ながしめ》を、
彼女はやさしい蒼ざめた自分の頬をゼウスの顔に
さしむけて眼《まなこ》を閉ぢて、彼女は死にます
神聖な接唇《ベエゼ》の只中に、波は音をば立ててます
その金色の泡沫《しはぶき》は、彼女の髪毛に花となる。
夾竹桃と饒舌《おしやべり》な白蓮の間《あはひ》を
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