i遠。
去《い》つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去《い》つてしまつた。
見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜《よ》に就き
燃ゆる日に就き。
人間共の配慮から、
世間|共通《ならし》の逆上《のぼせ》から、
おまへはさつさと手を切つて
飛んでゆくべし……
もとより希望があるものか、
願ひの条《すぢ》があるものか
黙つて黙つて勘[#「勘」に「(ママ)」の注記]忍して……
苦痛なんざあ覚悟の前。
繻子《(しゆす)》の肌した深紅の燠《(おき)》よ、
それそのおまへと燃えてゐれあ
義務《つとめ》はすむといふものだ
やれやれといふ暇もなく。
また見付かつた。
何がだ? 永遠。
去《い》つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去《い》つてしまつた。
[#改ページ]
最も高い塔の歌
何事にも屈従した
無駄だつた青春よ
繊細さのために
私は生涯をそこなつたのだ、
あゝ! 心といふ心の
陶酔する時の来らんことを!
私は思つた、忘念しようと、
人が私を見ないやうにと。
いとも高度な喜びの
約束なしには
何物も私を停めないやう
厳かな隠遁よと。
ノートルダムの影像《イマージュ》を
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