イろんと寝ころべば
粗布《あらぬの》は、満々たる帆ともおもはれて!……
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盗まれた心
私の悲しい心は船尾に行つて涎《(よだれ)》を垂らす、
私の心は安い煙草にむかついてゐる。
そしてスープの吐瀉《げろ》を出す、
私の悲しい心は船尾に行つて涎を垂らす。
一緒になつてげらげら笑ふ
世間の駄洒落に打ちのめされて、
私の悲しい心は船尾に行つて涎を垂らす、
私の心は安い煙草にむかついてゐる!
諷刺詩流儀の雑兵気質の
奴等の駄洒落が私を汚した!
舵の処《とこ》には壁画が見える
諷刺詩流儀の雑兵気質の。
おゝ、玄妙不可思議の波浪よ、
私の心を浚《(さら)》ひ清めよ、
諷刺詩流儀の雑兵気質の
奴等の駄洒落が私を汚した。
奴等の噛煙草《たばこ》が尽きたとなつたら、
どうすれあいいのだ? 盗まれた心よ。
それこそ妙な具合であらうよ、
奴等の煙草が尽きたとなつたら。
私のお腹《なか》が跳び上るだらう、
それで心は奪回《かへ》せるにしても。
奴等の噛煙草《たばこ》が尽きたとなつたら、
どうすれあいいのだ? 盗まれた心よ。
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ジャンヌ・マリイの手
ジャンヌ・マリイ
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