また日本画の展覧会を眺めることがあるが、その描かれている世界は何かといえば、春信や春草がその頃を描いた如く、この現在の風景を描いているものはあまりない。主としてそれは過去の日本支那の風俗人物美人であり、天平であり、絵巻物は雨月物語、栄華物語、西遊記であり、肖像は平清盛であり、頼朝である。美人は多く徳川期から招待されたるマネキン嬢である。風景は信貴山縁起、信実の風景であり、大雅堂であり、点景は仙人である。たまたまピアノ弾く現代娘もあるにはあるが、その絵の様式はさても美しく仕上げられたる人形仕立てであり、清元によってカルメンとカチューシャと女給の恋を現さんとて企てたるナンセンスをさえ感じることが出来るのである。
 清元とか浄瑠璃の様式というものはまったく、現代女給や女学生の心理を表すには少々不適当なテンポと表情をそなえている如く、日本絵の様式が現代のあらゆるものたとえばビルディングの前に立てるサラリーマンの肖像を描くには折合いが悪く、強いて試みると不調和から来る笑いを観者に与え勝ちである。なおさらそれを芸術の域にまで将来することは尋常の力わざではない。バスガールと車掌の六曲屏風というものが
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