うだが、しかしながらこの科学が油絵の重大な原因ともなってその技術の底に横《よこたわ》っている事を忘れてはならないのである。この点において東洋画の技法とは根本的に差違ある処のものである。
東西技法の差異と特色
私はここで西洋画と東洋画との技法の根本的差異について少し述べて置きたいと思う。
東西の文明が入り乱れて頗《すこぶ》るややこしくなった今の世の日本ではしばしば日本画も西洋画もあるものか、自由自在に何もかも取り入れて、要するに絵でさえあれば、何んでもいい、進めや進めという説もかなりあるものである。これは油絵の技術にのみよっている画家たちの中には尠《すくな》いようだが目下の日本絵の材料によっている人たちの中には、かなり称《とな》えられている処の事柄である。私自身も昔、日本画の技術を捨てる以前においては、かなりかかる説を振廻して先生を困らせた事を記憶する処の一人であった事を、白状して置かなければならない。出来ない相談という事を発見して私は完全に油絵に乗り換えてしまった次第である。
勿論、広い意味において、美の終点、芸術の終点ともいうべきものは、何に限らず高下深浅の別こそあれ、ほぼ
前へ
次へ
全162ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング