生活の一部分は救われるだろうが、現在の如き程度であっては、展覧会は来年度の開催が保証されれば幸福と考えねばならない次第だそうである。
 そこで現代の若き作家は商品見本を秋に示し、一年間は潜行して画商と、番頭と、作者を兼業しつつ多忙を極め、なるべく嫌らしく立廻って漸く生存する事が出来るだろう。
 * * * *
 だが、画家の絵を作りたがる心根は又いじらしいものである。如何にいじめられ、望みを奪われ、金が無くとも、ただ絵が描き度いという猛烈な本能に引ずられて、我々は仕事をしているために、決して画家は如何に条件が悪くとも、怠業をしたり示威的な行動を起したりはしない。何んだって構わない。自分の一年中の仕事の封が切って見せたくて堪らないのだ。たれかの背景となりたくて堪らないのである。だから画家が不出品同盟とか脱退とかいって怒るのは、必ず鑑査に関する時か、自己の名誉、権力についての時ばかりだといっていい。それが芸術家の性慾だ。
 全く画家の製作慾も、性慾そのものよりも強い。性慾は制限すれば健康を増すが、画家から筆を奪うと彼は病気になる。
 さて、展覧会では絵画は背景であり、見本市場であり、競争場
前へ 次へ
全162ページ中144ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング