じることの鈍さを感じます。
 で、画家は無言でただぼんやりと常に黙って仕事をしていればそれでいいわけです。その方がまず幸福なのですが、私はどうも非常な淋しがり屋であるために絵を描かないその間は、何か喋ってみたく誰かと話をしていたく思うのです。まァ画家の性格としては多少悩み多くて不幸な方かも知れません。

   写生旅行に伴ういろいろの障害

 私はかつて写生旅行をして満足に絵を作って帰ったためしは一度もありません。必ずてこずるか、中途で止すか、あるいは重い荷物を引摺り廻って絵具箱の蓋もあけずに帰って来るかです。それでだんだん写生旅行に出ることが嫌になって、近頃は殆ど出なくなってしまいました。自分の画室で神経を休めて、制作する時のような落着いた調子には、どうも旅さきでは行かないものであります。
 旅が嫌になる原因は随分いろいろあるので一口にはいえませんが、なぜそう落着いた気持ちになれなれないかと申しますと、これは人々によっては案外平気なことで、あるいは一向障害の数に入らないことかも知れませんが、神経やみのものにとっては例えば日本の今の旅行に関する設備等も随分西洋画を描くものにとっては、不
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