った傾きもあり、その上印象派の写生による小味専門というべき絵が永く日本を占領していた関係上、あるいは絵画の技術がまだ自然に向かっての写実を勉強するところの初学の道程に止まっていたために、構図の研究ははなはだ画家の間にも怠られがちであったと思う。画家が多くの材料によって一つの大作をまとめるためにはまず構図は第一の条件であり最後の効果をも与えるものである。[#地から1字上げ](「アトリエ」昭和二年一月)

   真似

 落語家が役者の声色を真似ますが、真似ることそのものがその芸当の目的でありますから、その声色なり様子なりが、真物らしく出来た時にはその芸術の目的は達せられたわけです。
 真似はいつまで経っても真似であって、真物ではありません。真物になっては面白くありません。
 上手な声色を聞いていると、まったくその舞台の光景を思い出してぼんやりとしてしまいます。そしてそれに似させてくれている落語家が大変有難い人のように思われて来ます。その労を謝したい気になります。ついにはその落語家が好きになってしまいます。
 私はよくこんなに真物らしくやれるものならいっそのこと役者になってしまえばどうかと
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