からいかようにも動かすことが出来るのだ。ところでこれはあまりに人間の自由になり過ぎるためにかえって災いを招き、いつも一定して変化あるよき構図が得られないことになったり嫌味なわざとらしい構図が出来上がるものであるから注意せねばならない。われわれはなるべく静物写生のためにわざわざ机を飾ってみたり、ちゃぶ台の上へギターをのせてみたりすることはどうかと思う。それよりも私は自然にとりちらかされた室内の情景に偶然よき構図やモティフを発見する方がよいと思う。構図のために構図を作ることはどうかすると嫌味を起こさしめる。
 写生による風景や静物以外、大きな壁画であるとか、あるいは何百号への大作などする場合、たんに自然の一角を切り取って嵌め込むだけでは絵はまとまらない。
 そこで何人かの群像や風景および草木、花鳥の類をばいかに組み合わせいかに配置するかが大作としては重大な仕事となってくる。しかしこれは初学者にはあまり用事のないことであるが、西洋などでは大作の用意のために、研究中にとくに構図のみの研究のために多くのタブローを画学生は作っている。日本では壁画の需要が殆どない上に建築との関係上、大作が流行しなか
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