い。芸術はカフェーの店頭を飾るべき紙製の桜であってはならない。しかしややもすると、新日本文化は紙の桜となりがちである。それが最も気にかかる事だ。
この書は、技法そのものについて、例えば新らしき芸術を作るには砂糖幾|瓦《グラム》、メリケン粉、塩何|匁《もんめ》、フライパンに入れて、といった風の調理法を説かなかった。あらゆる画家の修業は図書館では行わないものである。
彼らはミュゼーと、そしてモデルと、石膏と、風景から、伝心的に技法を悟ったに過ぎないと私は思っている。そこで、私は現代にあって、最も困難な絵画芸術に志す若き人たちに対して、この工事中の混乱に向うべき心構えについて、いささか私の考えを不完全ながら述べたつもりである。そして、それから先きの仕事は私の関する処でない。
昭和五年九月
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油絵新技法
1 序言
枠へ如何《いか》にしてカンバスを張るかパレットは如何に使用するか、等の如き説明はかなり多くの画法の書物に説かれているようだから、私はさような道具類の説明をなるべく避けて、ここには主として、専門に本心に油絵を描き出そうとする人たちへ、絵の技法
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