の調子を眺め、次の仕事を考える必要もあります、あまり度々《たびたび》裏返して見てばかりいると、勢や気合いが抜けて絵が大変いじけてしまうものであります、ある程度までは、度胸や胆力が必要です。
 ところで仕上った絵は、実物の風景とは、左右が反対になっています、丁度エッチングの場合と同じ事であります。
 絵具の塗り方は、あまり厚くぬらない方がいいのです、なるべく淡く、サラサラとつけて行く方がよろしい、ガラスの透明を利用してタッチを表わす工夫をするとよいのです。あるいは淡い、絵具を二、三回も重ねて、重く濃厚な部分や、軽く半透明な場所なども作るのです。すると、ガラス特有の味が出るものです。
 顔料については、油絵具を用いた場合も、粉絵具を用いた場合も、その描法に変りはありません、その効果において、油絵具の方は少し濃厚であります、粉末絵具は、自然粉っぽい気がして、サラサラとした感じがします、極く小品には油絵具がよく、少し大ものには粉絵具が適しているようであります、絵具ののびもよろしい古いガラス絵などは、主として粉末絵具が使ってあります。
 一枚のガラス面が、殆《ほと》んど絵具で塗りつぶされた時は、
前へ 次へ
全166ページ中61ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング