がめる事になる、即ち上演を差止められても文句がいえない気がするのだ。
洋室というものは大体において、ベッドなどはさっぱりしていて、むさくるしい[#「むさくるしい」に傍点]という感じが出ないのが万事に好都合なのだ、ベッドはむしろ部屋《へや》の飾りの一つとなっている場合が西洋では多い、日本では昼の日中《ひなか》に寝床を見ては如何にも嫌《いや》らしい、そこで西洋室に住む画家はいいとして、日本の長屋の二階、六畳において裸婦像を描かねばならぬという事は何んと難儀な事件である事だろう。
そこでわれわれは活動写真のセットの如く安い更紗《サラサ》を壁へかけて見たり、似合わぬテーブルを一つ置いて見たりなどするのだ、すると裸婦が婦人解放の演説でもしている形ともなるので、思わず阿呆《あほ》らしさが込み上げてくる事がある、ではこの長屋の二階と裸婦の生活的調和を試みようとするならば、即ち許されそうにもない場面を、持ち出さねばならない事になるのである。
私はしばしば展覧会において日本の女がどこの国の何んというものかわからない、エプロンのようなものを身につけたり、白い布を腰に巻いて水辺《みずべ》でゴロゴロと寝
前へ
次へ
全166ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング