サラ、ヌラヌラ、スベスベ、カサカサ、フワフワ、ネバネバ、ニチャニチャ、張力、弾力、円錐球楕円三角鋭角鈍角平面四角八角ギザギザ階段その他いろいろの複雑な立体などである。要するに目で見てははっきり感じられないもので、触れて初めて味の出るものばかりだ。
要するにこれらのモティフを作者がうまくトワール、板あるいは立体的にあらゆる材料を用いて思う存分組み立てればいいので一種の構成派の仕事である。それは立体的な複雑な触覚の音楽が作り出されると同時に目で見てもさも軟らかそうな、堅そうな、滑らかそうな、ゴツゴツらしいヘナヘナネバネバ円く長く珍しい立像が生まれ出ることだと思う。この立像は奇妙な形を呈することだろうけれども、触覚という世界から生まれたものだから、そこに非常な合理的なものがあるので、現存している構成派の作品などよりも人間には親しみがもっと多いだろうと思うのである。
この触覚芸術の展覧会が開かれたとしたら、随分珍しい光景を呈することであろうと思われる。この会場では「作品に手を触れるべからず」といったような注意の代りに「充分心ゆくまで作品を撫で廻して下さい」と記されるであろう。
それから面
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