なか立派に出来ましたな、というと、ええあまり入場者もやって来まへんさかい、かえって静かに観賞が出来てよろしゅうおます。なア、思うたよりエエ展覧会[#「展覧会」は底本では「展観会」]やろがな、と芸者達の賛同を求めますと、いつもベストコダックでも提げて歩いているという新しいのが、ほんまにエエ気分だんな、と賞賛しました。
 その後、これでは店の宣伝にもならんということが明らかになりましたので、僕に二科の若い人達の小品展覧会でもしてもらえまいかとのことでした。会場は小さくて感じがいいので、僕と鍋井とで何とか世話をすることにしました。
 その結果はすこぶるよかったのです。五、六日間にちょっと千人近い入場者があったものです。気分の大将キリキリ舞いをして気の毒になったくらいです。店の宣伝も効を奏したわけですが、その後一向店に商品が並ばないので、何を買いに行っても間に合いません。これはまた不思議だと思っていますと、妻君が僕に家の内容を打ち明けて泣き出しました。ナルホドと思いました。
 その後店は夜など早くからガラス戸が閉まっていて、電灯が暗くて商売はしているのかいないのか疑わしい体裁でした。それが柳屋
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