酷過ぎますので堪りません。彼には妻子があるのですから、なかなかええ人やという評判くらいでは食っては行けないのです。M君は止むを得ず保険会社の勧誘員を勤めました。ところがちょっと絵心でもあるくらいのM君ですから、やはり芸術家の潔癖な心得だけは、心の片隅に持っていますから、勧めたくもない保険など他人へ強いてみたりする下等な行いはいかにも出来難いのでありました。M君はある時私なら馴染でもあるし話やすいと思ってか、勧誘にやって来ました。私はM君には気の毒と思いましたが、大体私は何年か後の金千円という金に興味など少しも持てないのだから厭だといって断りました。するとM君はなるほどそれもそうですなと同感して、すぐ帰ってしまいました。それくらいよくものの判った人格者であります。
それからM君は中之島公園のベンチへ腰かけて、もっと自分の趣味と自力でやれる公明正大な商売はないかと考えたのでした。数日の後彼はテンプラ屋を決心しました。テンプラは彼の好物でもあるし資本もあまりかからない関係からかも知れません。
しかし妻君は大変反対しました。妻君の心には芸術がありませんから、亭主のテンプラ屋は駄目だという計
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