憾に思う。
骨人
脂肪過多はどうも夏向きでない、でぶでぶと肥えた人たちは、真夏において殊《こと》に閉口しているのを私はよく見る、じっとしていても汗をだらしなく流しているさまは、真《まこ》とに気の毒な位いである、歩けば股摺《またず》れがして痛いのだ、しかし私は一生に一度でもいいから、股摺れの味が味《あじわ》いたいと思う事がある、そんな身分であれば、さぞ心ゆったり[#「ゆったり」に傍点]とする事かと思う、私のように痩《やせ》た人間はいつも股と股との間は四、五寸も距離があり身体は地球から二、三寸上を、人魂《ひとだま》の如くフワリフワリと飛んでいる如く感じられてならぬ、心常に落付かない、その代り夏は葦張《よしずば》り、風鈴、帷子《かたびら》の如く冷《すず》しい、従って夏に向えば向うほど、身内の活動力が燃え上って来るのを感じる。
八月頃の雲や空を眺めると、もう私はじっとしていられない。何はさて置き、一応は帽子を冠《かぶ》って、せめて屋根の上なりとも思う存分走って見ようかと思う位い、気が浮き立って来るのである、だから梅雨《つゆ》晴れという時が、一年中でも一番素晴らしく楽しい時期である
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