分体裁がいい、美しくもあるし、全くうまくもあるし、腹はふくれず、かつ談話していても、相手と自分との間に丁度いい淡い煙幕が張られて、真《まこ》とに長閑《のどか》な心地がする。
 私は以前煙草だけは愛用していたが、病気してから医者にやめさされた、やめた最初は談話中など相手の顔がはっきり見え過ぎて弱った事を覚えている。
 私は最近、神戸のあるドイツ人が経営する、菓子とカフェーぐらいを出す家で実にうまい菓子を発見した、それは、上下二つの軽快にして白いカルメル様《よう》のふたの中に真白のクリームが充満しているのだ、かむとハラハラとふたが砕けて、クリームが舌へ流れ出すのだ、その甘さが堪《たま》らないのだ、そして胃の腑《ふ》へ達する少し手前において煙の如く消滅してしまうような気がするのだ、しかしかなり甘いので二つ以上はたべられない、私の隣へ座った西洋人は五つたべた、うらやましかった。
 私はこの頃、しばらく浮世を忘れるためにこの家へまで出かけるのである、そしてこの菓子をたべるのだ。この菓子の名を「メレンゲ」という。

     画工

 絵|描《か》きというのは職業か何か、私にはまだはっきりと判《わ
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