います。即ち私のガラス絵描法というのは決して一子相伝《いっしそうでん》法の秘法ではありません。自分勝手な、便利な方法に過ぎないのでありますから、もっといい方法があれば何時《いつ》でも私は教わりたいのであります。
私は目下自分の便利上、油絵具を使用します、しかしながら支那のものなどは粉末絵具をニスで溶解して使用しているようであります、私はそれも試みて見ましたがなるほど粉末絵具や日本絵具の砂ものなどを使用する方が味がいいようであります。
○私が目下使用している製作材料
(A) 油絵具使用の場合
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顔料《がんりょう》(油絵具) を用います、普通油絵に使うだけの種類は必要です。
(金銀泥及|箔《はく》) 泥は大変美しい装飾的効果を現わすものです、私はよく金泥で署名をします。
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メディユムとしての油
A ヴェルニアタブロー 〔Vernis a` tableaux〕
B 速乾漆液 工業用薬品店にあります[#「A」と「B」は「メディユムとしての油」の下で二行に分かれ、「A」「B」の下に上向きのくくり記号]
右二種の油をAを7Bを3位いの割合に混合して使用します、この割合は時に多少、変更してもよいのです、速乾が多くなると早く固まり過ぎて、広い部分など塗るのにむら[#「むら」に傍点]が出来て困る事があります。またヴェルニばかり多量では、乾きが遅くて、あとから筆を重ねると、先きの絵具が皆動いてしまいます。
この二種のいい加減の混合液は、ガラス絵の生命であって、この油によって、絵具がガラス面へ固定して、次へ次へと筆を重ねて行く事が出来るのです。
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筆 非常に軟かいものがよいので、私は日本画の彩色筆を大小五、六本と、面相筆《めんそうふで》を二、三本用意しています。
筆洗い 石油、及アルコールを併用します、即ち石油で先ず洗った後になおアルコールでよく洗って置くのです、アルコールは主として速乾を洗い落すのです、あるいは手先きのよごれた時や、ガラス面の掃除《そうじ》に使用します。また描き損じた絵を洗い落すにもアルコールが一番|重宝《ちょうほう》であります。
ガラス 油絵でいえばカンヴァスに当るものです、描くべきこのガラスは、なるべく薄くて、凸凹《でこぼこ》や泡のないものを
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