「おちよやんはいるか」といって暖簾をくぐるのである。茶の間の長火鉢のまえで紫藤のまむしを一杯食べて、それから小用に立って、その帰りにおちよやんの尻を一つ蹴るのである。この一と蹴りが何のことかはおちよやんよく心得ていた。すなわち二階三畳の間を掃除して、行燈と、煙草盆と、お茶と、その他いろいろな用意をする。さてM老人は二階へ。雑用の後、M老人は手も洗わず「どれ一つ親類のゴタゴタを片づけて来ましょうか」といって立ち上がるわけらしい。
 おちよやんは時々私達へそっと喋る。「あのおっさん気をつけなはれや、いやらしおまっせ……。」
 その手で煙管へたばこをつめながら、老人は私の前へいかめしくも坐って「何ということをした。罰あたりめが、恩を仇で返すとはそのことや」といった。私は平身低頭以外の何物でもなかった。

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 その後、難波あたりで小さな文房具屋が始まった。私と花嫁さんがきちんと向き合って店の番をした。B夫婦はまずこれで一と安心やといって安心をしてくれた。
 花嫁R子は神経的な清潔さを持った女だったが、どうしたわけか、二、三カ月すると奥座敷のくらい壁に向かって、幾日もわけの
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