父母に甘えることの出来る子供は、相当の年になってもなかなか熟さないものだが、甘えることの出来ない子供は何といっても感情的には独立しているから、強くかつ早熟だ。そして母に甘える代わりに広く一般の女性に甘えようとした。あえてしたわけではないが自然左様な傾向になって来たのだ。
もっとも私が接近し得る女性といえば庭に働く女中達だった。女中の入れ替わりというものは私を妙に嬉しく興奮させた。女中のCというのが瀬戸内海の小島から来た。美しかった。ところがこの女が私の食膳をひそかに豊富にすることに努力してくれた。お菜の分量が急にめきめきと常の二倍に達した。私は感謝せずにはいられなかった。そして私ははじめておかずの注文を企ててCへ甘えてみるのであった。
3
店の間には丁稚のQと、女中のCと、そして私とが寝ることになっていた。丁稚のQは横になるとむしろ仮死の状態にあったから、店の小間物の類とみなしてよかった。そしてCは夏の夜の温気で、いとも輝かしき横臥裸女となり切っていた。ある夜のこと私は思い切って暗闇の中にそっと立ち上がった。心臓の血が一時に頭に向かって逆流した時、私は片隅にあ
前へ
次へ
全152ページ中70ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小出 楢重 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング