にぴったり調和するように、もっと色彩の美しい、目につきやすい、すっぱりしたものであって欲しいと思うのである。

   陽気すぎる大阪

 私がもしも現在なお大阪の財産家のぼんちであり、その遺産と先祖代々の商売を継承していたとしたら、そしてその余りの時間を南地北陽に費《ついや》し、その余りの時間をダンスホールとホテルに、その余りの時間をゴルフと自動車に、その余りの時間で市会議員ともなり、その余りの時間で愛妾を撫育《ぶいく》し、最後の甚だ吝《しみ》ったれた時間を夫婦|喧嘩《げんか》に費すという身分ででもあれば、私は、大阪の土地くらい煙たい階級のいない、のんきな、明るい、気候温和にして風光|明媚《めいび》なよいとこはないなアと満足するにちがいない。
 ところが学術、文芸、芸術とかいう類《たぐい》の多少|憂鬱《ゆううつ》な仕事をやろうとするものにとっては、大阪はあまりに周囲がのんきすぎ、明る過ぎ、簡単であり、陽気過ぎるようでもある。簡単にいえば、気が散って勉強が出来ないのだ。画家だってよくこんなお世辞を戴《いただ》く。「あんたらええ商売や、ちょっと筆先きでガシャガシャ塗りさえすれば百円とか五百
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