《せんたん》的にして若く勇ましく、シックな特質を備えていると思う。
だから、この尖端的な世界にあっては、恋愛でも油絵でもが、少量の雅味と滋味を断然排斥して清潔に光沢をつけ、観衆を集め、然《しか》る後用事がすめばさっさと取りはずして古きタイヤーとして積み重ねてしまって差支《さしつか》えはない。これで展覧会さえ野球ほどの入場者がありさえすれば甚だ合理的なのであるが、その辺に現代日本と新鋭作家及び展覧会との間に生活上の悩みが存在するらしいのである。
ともかく、活動写真のレンズに埃《ほこり》や古色があってはならない如く、新らしき芸術、尖端的都会、尖端人、あらゆる近代には垢《あか》は禁物である。それは手術室の如く、埃と黴菌《ばいきん》を絶滅し、エナメルを塗り立てて、渋味、雅味、垢、古色、仙骨をアルコホルで洗い清め、常に鋭く光沢を保たしめねばならない。断髪の女性にして二、三日風邪で寝込むとその襟足《えりあし》の毛が二、三分延びてくる。すると尼さんの有《も》つ不吉なる雅味を生じてくる。断髪の襟足は常に新鮮に整理されねばならぬ。新らしき女性に健康が第一の条件であらねばならぬ事は当然である。
あ
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